第6章 体育祭
周囲の音が遠めに聞こえる
今が体育祭のインターバルだということすら忘れて
二人だけの世界に落ちて行く
「……罪悪感て…は…?」
『分からないよね…』
当たり前だ
それはずっと
誰にも隠していたんだから
『初めて会った時…助けたかった人を、助けられなかったって…言ったの、覚えて…ないかな…?』
希望的観測で聞かれたことだが
俺はそれを
はっきりと覚えている
お前のことを好きになった取っ掛かりの
一つだったから
私は、この個性で人を助けたいんです
全てを消してしまうことに萎縮して
助けたい人を助けられないままでは
いたくないんです
あの時のこいつの
強い決意を宿した目を思い出す
『…それが……翔のことなの』
助けられなかった存在
だから罪悪感か
『昔、飼ってた猫が車に轢かれて…それを治そうとした事があったの』
ああ
それが
さっき言ってた猫のことか
『でも…治せなかった
まだ個性を使いこなせていない内に
命あるものに残酷な力を使った罰…』
「罰って……」
お前は助けたかっただけだろが
『すごく…すごく辛かったの……覚えてる』
神奈の顔が
悲痛に歪む
『毎日毎日、翔の家で泣き喚いて…迷惑かけて…毎日毎日…励まして貰った』
学校にも行かず
ずっと一緒に居てくれて
ずっと背中をさすってくれた
『そんな時に私…誘拐されそうになったの』
「っ」