第35章 神原秋人から告げられたその言葉は……
私は神原秋人に掴まれたままの腕を見つめ、口を開く。
「あの……腕、離してくれないかな? 私、屋上に行かなきゃ……」
今のこの状況に戸惑いながら、私はそれだけを伝える。 だが、神原秋人の口からは言葉は紡がれない。
「神原秋人……? 早く、離して……」
私はもう一度、そう伝える。
すると
「……この手を離したらキミは博臣の所に行くの? 全ての<答え>を聞きに……」
神原秋人の口からはそう返ってきた。
「……うん」
私が彼の目を見つめ、そう頷き答えると神原秋人は目を伏せ、「そう……」と、呟いた。
「神原秋人はどうしてそんな表情をしてるの……?」
「……僕、今どんな表情をしてる?」
気になったことを尋ねてみたら、そう返された。
「どんな、って……」
(泣きそうな表情だよ……)
「何だか辛そうで苦しそうな……今にも泣きそうな表情をしてる……」
私がそう言うと、神原秋人は小さなため息をつき、「やっぱりダメだったなぁ……」と、声を漏らした。