第29章 不安なんです。
美月が部屋を出て行ってから暫くして華菜が目を覚ました。
「んっ……あれ……ここは……?」
華菜はまだ寝ぼけているのか目をこすりながら俺の部屋を見回している。
「俺の部屋だ、華菜」
俺がそう言うと華菜はビクッと肩を跳ねさせながら俺のほうに顔を向けた。
「ひ、博臣先輩っ⁉︎」
「目、覚めたか?」
「え、えぇ……まぁ……」
「それならいい。 だが、何故ここに華菜がいるんだ?」
「それは……昨日博臣先輩が傍にいてくれ、って言ったから……」
(俺が……? 全く覚えがないが……)
俺が頭を悩ませているとベッドの横から華菜が「その様子だと覚えてないみたいですね……」と呟いた。
「あぁ……。 悪い……」
「いえ、いいんです。 だって、博臣先輩は風邪を引いてたわけですし……」
華菜は目を伏せ、言った。
その声はどこか元気がないように感じられた。
彼女のそんな声を聞き、俺は尋ねる。
「元気がないように見えるが何かあったのか?」
「いえ。 べつに何もないですよ?」
華菜は笑顔を見せ、そう答えた。 だが、その笑顔でさえ無理に作られている感じだった。