第186章 〜後日談〜Halloweenイタズラ〜弓乃×政宗様
ベンチ横の手洗い場。
(冷たーっ!でも…私が無理に乗らせたんだし……ね)
蛇口から勢い良く流れる、冷たい水。
それを、カバンの中から取り出したハンカチにたっぷり吸わせる。色が変わるぐらい、水を含んだハンカチを普段の掃除の時間で絞る雑巾より、丁寧に力強く絞った。
いそいそと戻り、ベンチに座り脚を組んで顔を仰向けた政宗の顔に……
ハンカチをそっと乗せた。
すると、
「っ!!……ばっ!ビビったじゃねぇか」
仰向けていた顔からハンカチを取り、こっちに眉間にシワを刻んだ顔が向く。
「何よ!人が親切にしてあげたんだから、まずお礼でしょ!」
素直じゃない私。
ベンチに座り「少しはマシになるから使いなさいよ」と、そっぽを向きながら、口だけは動かす。軽い口調の返事は一応横から返ってきて……
「あー……。冷たくて良いかもな」
視線を戻せば、前髪をサッとかき上げ政宗はハンカチをそこに乗せた。
そんな仕草だけでも、すぐに反応する胸。さり気ない動き一つが男らしくて、ドキドキさせられてばっかり。
悔しいけど、好きだから仕方ない。
暫く、そっとしといてあげようと思い。行き交う人や、近くのアトラクションなんかを見て、時間を潰す。
でも、逆に喋らないで静かにしてればフツフツと考えたくないことまで、頭に浮かんできて……
(……返事したのかな?)
最近気になってることが一つあった。ずっと、タイミングみて聞こうか聞かないかで、悩んでたけど……
やっぱり悩むのは、性分じゃない。
だから……
「ねぇ。一年の子に、なんて返事したの……?」
勇気よりも、どっちかっていうと……
思い切りを使って聞いてみた。
この前、部活の更衣室でふと耳に入った会話。
ーー政宗先輩に明日、告白するんだ!
ーー決心したんだぁ〜がんばれ!応援してるよ!
ひまりの雰囲気に、ちょっと似てる弓道部の一年。見た目もアイドル系で、いかにも男子ウケが良さそうな子。
特に、めっちゃ仲良いわけじゃないけど。それなりには、話したことがある。