第36章 月見ず月(8)
その日の夜___
私はお風呂から上がり、鞄の中の課題をじっと見る。
織田先生は昼から会議に行っちゃって、結局提出出来なかった。
(でも、先生が片思ふの和歌を書いたのは、意外だなぁ)
先生、もしかして好きな人いるのかな?ドSで無茶苦茶な事ばっかり言うけど、何だかんだ優しいしセレブだし、大人だし……。
(すっごい綺麗でナイスバディな、恋人がいそうなイメージだけど)
カラカラと窓を開け、星空を見上げる。
文を詠み解くか……。
私はさっき鞄から取り出した、
手紙をもう一度吟味してみる。
ごくごく普通のラブレター。
真っ白な封筒。
裏にハートのシール。
中には便箋。
ラブレター描いて下さい〜!って、言われたら大半の皆んなが書くような、定番の手紙。
(家康がよく貰ってるのは、女の子らしい花柄とか水玉が多いけどね)
『貴方はある、戦国武将の姫君に選ばれました』
何度読んでも変わらない。
貴方は、私は?
ある、誰か?
戦国武将、男の人?
姫君、相手?
選ばれました。
直訳して見たけど、全然分からない。
文を返すにしても相手が誰か分からない以上、書けないし。