第36章 月見ず月(8)
昼休みのチャイムが鳴り、私はお弁当をいつもより早く食べ終わる。
「ごめんね?付き合わせて」
「気にしなくていいってば!実は、私も詠み分かんなかったし」
え?そうなの?
と、私が言うとゆっちゃんはクラスの子はほとんど分かってなかったから、と慰めてくれる。
「織田先生も、もっとマイナーなヤツ選んでくれないと、ね!」
「もしかしたら、先生も誰かに向けて選んだのかな?」
そんな話しをしながら歩いていると、女の子達に囲まれた三成君の姿が見えて、
(邪魔しちゃ悪いよね?)
私はすれ違う時に簡単な挨拶を交わす。すると、
「ひまり先輩!待って下さい!」
呼び止められ、振り返ると三成君がコケそうになりながら走り寄ってくる。
何か用事かな?そう思って待っていると、いきなり肩をガシッと掴まれて……
「今のは、決して違います!」
「な、何のこと!?」
「女性と話してたのは、今度のテストの事を質問されて……っ」
掴まれた肩がガクガクと揺れ、私は三成君に落ち着くようにお願いをすると、やっと気付いてくれたみたいで……。
ハッとしたように、手を離した。
「す、すいません。勘違いされたのではと、思いまして」
三成君はメガネをかけ直した。
(勘違い?何のだろう……)
何処に行くのかと聞かれ、調べものをする為に、今から図書館に行くことを話す。
「ひまり先輩、確か歴史苦手でしたよね?もし、宜しければ少しコツをお教えしましょうか?」
願っても無いお誘いに、私は勢い良く頷く。本当は家康に勉強教えて貰おうと思ってたけど、今度部屋に来たら覚悟しなよって何回も言われて……。
何となく行きづらくて、困ってた所だったから嬉しかった。
「テスト前に連絡するね!」
「はい、楽しみにしてます」
三成君の笑顔に癒され、また歩き出す。隣を歩いてたゆっちゃんは、急にビシッと私を指差し、そんな約束したら徳川に怒られるよ?と、冷やかすように言う。
「家康が何で怒るの??」
「あちゃー。やっぱ、ひまりが和歌を詠み解くには……百年はいるね」
??
うんうんと、頷くゆっちゃんに首を傾げながら図書室に辿り着き、何とか休み時間内に課題を終わらせた。