第182章 〜後日談〜lost property〜
放課後。
お決まりになった寄り道の公園。
いつの間にか始まった、
ブランコ競争。
「負けないから!」
「多分、コイツが勝つまで終わらねぇ」
「……はぁ。ひまり、しっかり掴まってなよ」
「え?……わぁ!!」
家康は腰掛けたひまりと、
向き合い片足を乗せる。
「「せーの」」
俺らは同時に地面を蹴り、漕ぎ始めた。
キィーッ!キィーッ!ブランコの軋り音が絶え間なく、鳴り響く。
「きゃー!!すごーい!星が掴めそう!」
キャーキャー騒いで、
喜んだのはコイツだけ。
数分後……
「高校にもなってブランコ競争、二人乗りされてはねえ。安全の為、公園マナーはしっかり守るように」
「「すいませんでした」」
男の俺らは、夜間の見回りに来た公園管理者にみっちり、絞られた。
「ごめんなさい」
女のひまりのお咎めは、俺らへの謝罪。
シュンとする頭を撫で、
「「ぷっ……」」
二人でうさぎ耳を作って吹き出した。
ブランコ競争も今日で卒業。
「えっと、時計台に9時集合ね!……お弁当どうする?…うん、うん……」
ひまりが公園の隅で、明日の遊園地?要件か、何かしらねーが、話をしている間……
キィ……キィ…
「今日、中学行って。落し物箱まだあるか見てきたらよ……新しい箱に変わってた」
「……は?わざわざ、何してんの」
「卒業式の写真、久々に見たせいか…お前があん時に入れてたヤツ気になってな!」
「俺も気になってるけど。間違えて下駄箱に入ってた、ラブレターのこと」
それ以上は喋らず、ひまりが戻るまでお互い……口を閉ざした。
俺らの中学一番のほろ苦い思い出。
ひまりへの想いを、
あの箱に落としてきたことかもな。
「じゃーね!幸!また、連絡するね!」
仲良く手を繋いで帰る、
二人の背中を見送りながら……
「またなっ!!」
ニシャッと、歯を見せ笑った。