第182章 〜後日談〜lost property〜
五分後__
キィーッ……キィ……。
「幸ーっ!ごめんね!ここまで、来て貰って!」
公園入り口から聞こえた足音。
ぼんやりとした灯の中、現れたひまり。
「気にすんな。ちょうど、中学に用事があったからな」
え?中学?
急いで走って来たのか、軽く呼吸を整え、キョトンとするひまり。俺は、大した用じゃねーよ。と答える。
「ありがとう!写真!三人で撮ったのアレ一枚だったから」
家康に預けた封筒の中身は、卒業式に撮ったあの写真。撮影したのが俺の親のカメラで、引越しでバタバタしてる間に、すっかり渡すのを忘れ……
大会の時、中学の話をしている内にひまりが写真のことを思い出した。
ーーそうだ!幸!卒業式の写真って、まだある?もうデータないかな?
ーー……悪りぃ。そういやぁ…現像してまだ渡してねーな。
で、家康に預けることに。
「まさか、背後でイタズラされてるとは、思わなかったけど」
ひまりはブランコに腰掛け、口を尖らす。
「あん時のお前、すっげー目、真っ赤でうさぎみたいだったからな」
「もう!……それより、はい!クッキー焼いたから食べて!」
「美味そうじゃねーか」
俺は遠慮なく受け取り、早速食う。
律儀に礼したいから会えないかと、連絡が来た時はビビったけどな。
(家康が妬いても知らねーからな)
どうせ、コイツに言っても分からねーから、俺は敢えて口にはしねぇ。
それから暫く、話し込んでいると……
予備校帰りの家康が通り、
久々に公園で三人が揃う。
聞けば俺と会うことは、
一応、報告してあったらしい。
「また、スカート履いて乗ってるし」
「ま、まだ漕いでないもん!」
「恋人同士になってもそれかよ」
俺は肩を竦めた後、
立ち上がりブランコに片足を乗せる。