第182章 〜後日談〜lost property〜
十年前__
休日、秋の昼間の公園。
「おい!お前、ブランコ乗るか、本読むかどっちかにしろ!」
俺は隣のブランコに座るヤツに、声を掛ける。けど、ムスッとした顔で俺を一回見ただけで、すぐ背中をむけやがった。
地元の公園が、点なんとか中って紙が貼ってあってよ!遊具使用できねーから、わざわざ自転車必死に漕いで隣の公園に来たつーのに。
遊具は少ねえーし。
その癖、砂場や滑り台にはちびっ子がわんさかいてよ。
仕方なくブランコに。
俺はブランコの上に立ち、
鼻の下をスッと擦る。
「乗ってんなら、俺と競争すんぞ!」
「は?なんで?俺、明日のじゅくまでにコレ読まないと」
「なら、なんでブランコ乗ってんだ!」
「待ってて、って。幼馴染に言われたから。誰か来たらちゃんとドクつもり」
「ふーん……お前…」
まさか、ブランコ乗れないのか?
そう揶揄ってやると「乗れるし!」と、言ってやっと立ちやがった。
「どっちが空に近いかしょうぶだ!」
俺は着ていたスポーツメーカーの赤いパーカーを脱ぎ、端っこの草むらに向かってポイッ!と、投げた。
すると隣のヤツも真似して、たっかそーなどっかの店のロゴが胸に入った、黄色のパーカー。それを脱ぎ畳むと汚れない場所に置く。
「「せーの」」
同時に地面を蹴り、
ブランコを俺たちは全力で漕いだ。
「くっそー!」
もうちょいで勝てた!俺は、悔しくて地面に転がっていた小石を蹴り飛ばす。
「俺の勝ちだ」
仏頂面してたふわふわ頭のヤツが、
ちょっと得意げに笑う。
「いっちゃーん!滑り台であそぼっー!」
「へ!さっきはブランコって…はぁ、聞いてない」
ピンク色のワンピースが、ヒラヒラ滑り台に向かう。アイツが幼馴染か?と、聞けばコクッとうなずく。
「次は、ぜっーてえ勝つ!また、競争しよーぜ!」
男の約束!!
俺は歯を見せて笑った。
〜後日談〜lost property〜(完)