第182章 〜後日談〜lost property〜
「頑張ったご褒美、くれるんじゃなかった?」
「ご、ご褒美になんてならないよ!それに……」
チラリ向けられた視線。
訳が分からず、ますます顔をしかめれば、家康は催促をしながら両手を広げた。
「演技でも、大勢の前で幸村と抱き合ったんだから。そのこと思えば、恥ずかしくない」
「もう!演技でやるのとは違うんだから!……でも、約束は約束だから」
飛び込むように、家康の腕の中に抱きついたひまり。
「……優勝おめでとう。家康」
「ひまりもジュリエットお疲れ。言っとくけど、昨日は練習相手したけど……」
悲恋は好きじゃないから。
何となく感じてた違和感。
「お前……演目がシンデレラとかだったら、何が何でも相手役してただろ?」
「……さぁね」
ひまりの背中に腕を回しながら、
ボソッと家康は呟く。
負のオーラを漂わせ、校長室に文化祭の日時を抗議しに行く、家康の姿が無性に頭に浮かんだ。
その日、二人に引っ越しの話をする。
「卒業式までに、いっぱい思い出作ろうね!」
それまでに、絶対にブランコ競争に勝つとか言って……。また漕ぎ始め、
「ちょっ!///何回、注意したら分かるワケ!」
「わぁっ!何で、止めるのーっ!」
「ばかひまり!!」
「ハガじゃないもん!」
「ブッ!…お前ら変わんねーな」
俺は腹を抱えて笑った。
卒業式が近づいたある日。
一通の手紙を書いた。
人生初のラブレター。
「離れても、変わんねーからな」
二人にな。
宛名はひまり。
でも、入れた下駄箱は家康。
「何コレ」
「どう見てもラブレターだろ?」
後日、ひまりが何にも言わねーから、てっきりあの後、捨てたのかと思ったら……まさかの落し物入れ。
アイツが中身を見てから、入れたかどうかは定かじゃねーし。本気で、ひまりへのラブレターだと勘違いして、一応捨てずにそこに入れたのかもしれねぇ。
今更、聞く気もないけどな。