第182章 〜後日談〜lost property〜
予定では、打ち上げだった放課後。
家康がまだ会場から戻って来ないからと、祝いと文化祭の打ち上げを一緒にする為、後日に持ち越された。
「もうちょっとで、空に届くーっ!」
「ん、なわけあるかっ!」
キィ〜!キィーッ!
赤い夕陽に向かって、俺たちは相変わらずガキみてーに、ブランコ競争に夢中。
「また、負けたーっ!」
「俺に勝つなんて一生、無理だな」
お決まりの公園で寄り道。
寄り道つっても、目的は家康の帰りを待つ間の暇つぶし。
「いつか絶対、勝つもん!」
「期待しねーで、待っててやるよ。今まで俺に勝った奴は……一人しかいねえ」
俺はスピードを緩め、立ち漕ぎから座る体勢に変える。
「え!幸に勝った人いるの!すごーいっ!」
「小学の…確か、低学年頃だったか?静かにここで本読んでたヤツに、挑んで負けた。余裕で、勝てると思ったのによー」
「ここで?幸も昔、この公園来てたの?もしかして、会ってたかな?」
不思議そうに首を傾げるのを見て、俺はニシャッと笑う。「さぁな」そう答えるのと同時ぐらいに……ひまりは突然足を地面に滑らせ、ブレーキをかけると……
目を公園入り口に向けた。
「家康!!……」
ガシャン!鎖から手を離して、ブランコから降りると真っ先に、入り口に向かって走り出す。
俺も、その後に続き。
「優勝!おめでとう!!」
「やるじゃねーか!」
祝いの言葉をかけた。それからひまりは興奮したように、大会の話を根掘り葉掘り聞いた後。
自分達の舞台と文化祭の話を始める。
「幸がね!あのシーン、アドリブ台詞言ってね!……それから……あとね!」
「お前、ちょっとは落ち着け」
「話は、ゆっくり聞くから。……それより、ひまり。約束は?」
約束?なんの話だ?
眉を潜めた俺の隣には、タコみてーに顔を真っ赤に染めたひまりの姿。
もじもじ指を胸のあたりで動かして、今じゃないとダメ?と、甘ったり声出して家康を見上げた。