第182章 〜後日談〜lost property〜
女は騒がしい。
すぐ泣くし、勝手なことばっか言ってすぐ怒り出す。
俺の中では面倒な存在。
それは、ひまりも例外じゃない。
しょっ中、泣くし。プンスカ怒り出す。でも、最後には……必ず笑ってた。
唯一、俺が気を許せる女。
公園から自転車で、家に戻り……
頭に引っ掛かりと、
霧がかったモヤついた胸。
俺はまだ、この感情の答えが出せないまま。鞄を部屋に放り投げ、床に転がった。
文化祭、当日を迎え……
幕が上がる十分前。
舞台裏で控えていた俺の所に。
「幸!昨日、ずっと待ってたんだよ」
ジュリエットの衣装に着替えた、ひまりが頬を膨らませながら、駆け寄ってきた。
「……なんだよ。俺がいなくても、練習してたじゃねーか」
「え……?公園に居たの?」
目の前でパチリと開く大きな瞳から、バッと視線を外す。
「っ!!」
無意識に口走った言葉。正直、俺自身が一番焦った。その証拠に口元を覆い、
「……なんでもねー」
聞こえるか聞こえねーかの掠れた声を出し、バツが悪くなって背中を向けていた。
「「……………」」
流れた短い沈黙。
何となく場が悪くなる予感だけが、走り……俺は無言のまま立ち上がる。他のヤツの所に行こうと、足を進めようとした時だ。
クッ!!
片方の肩に掛けてあった赤いマントの裾を引っ張られ、足止めを食らう。
「何で、声掛けてくれなかったの!……三人で必勝祈願行く約束したのにっ」
そのまま放っておけば、良かった。
けど、ガキな俺は振り返り……
「うるせえなぁ!何時迄も三人、三人言うんじゃねぇ!相手役だって、本当は家康が良かったんだろ!!」
湧き上がる感情を吐き出した。
名前も分からないような苛立ち、不安、怒りを。
「ゆ、き……何でっ。私、そんなこと思ってない!」
「いい感じだったじゃねーか。……俺とは全然違ってな」
俺とは、適当にやりゃいーじゃねーかと。……吐き捨てるように言った瞬間。後悔した。