第182章 〜後日談〜lost property〜
そっからみっちり一週間。
始まったかったるい劇の練習。
劇に出演しないヤツは、裏方仕事。衣装ら小道具、簡単な背景を作成、準備。
一クラス時間の割り振りは、二十分程度。
名シーンだけ拾い出して、台本も薄いしよ、台詞も少ねーかもしんねー。
けどな。
「ロミオ。貴方はどうして……」
「ジュ、ジュリ……///!」
(上がり症なんて今更、かっこ悪くて言えねー)
頭を抱え、ブランコの上にドカッと座る。
「幸?真っ赤だよ?」
それを、隣から覗き込むひまり。
「バッ///そんなに顔近づけんじゃねー!」
普段は大方、三人でいた時間。劇の練習が始まり、家康は大会が近いこともあり自主練。放課後は、必然的に公園でひまりと二人……
台詞を合わせる日々が続いた。
ブランコに腰掛け……
キィーッ……キィー…。
「今日こそは、絶対勝つもん!」
「まぁ、無理だな」
帰り際には、ブランコ漕ぎの競争。
体格的に小柄なひまりは、不利。それでも、膝を一生懸命に伸ばしたり曲げたりを繰り返して加速する。
(ったく。見えてもしらねーからな)
ヒラヒラ風を切る、セーラー服のスカート。この前、家康にすげー怒られてたのも、すっかり忘れてんのか夢中で漕ぎ……
「空に届きそーーっ!!」
あぶねーのに、たまに片手を空に伸ばす。
スピードが落ちれば、立ち漕ぎ。
ある程度したら座って、騒ぎ出した。
俺はそれを横目に、地面の上で片足を勢い良く蹴り、一気に漕ぐ。
親の都合で、中学卒業後に引っ越すことが決まった。それを、まだひまりに言えねー自分が居た。