第182章 〜後日談〜lost property〜
中学三年の秋__
誰が提案したか知らねーけど。
黒板に派手に書かれた文字。
『ロミオとジュリエット』
そして担任はチョークをスラスラ走らせ、ジュリエットの配役の欄にひまりの名前を書き込んだ。
ダンッ!!
「ま、待って下さい!私、演技なんてっ!!」
それを見て、真っ先に反応したのは名前を書かれた張本人。ひまりは、勢い良く席から立ち上がり、首と両手をブンブン振った。
俺も、一瞬?
ひまりが演技してんの想像して……
ドジって大事なシーンですっ転ぶのが、オチ?それか、恥ずかしがって台詞をぶっ飛ばすとか?
(まぁ、ねーな。ある意味、斬新かもしんねーけど)
席が隣の俺。
他人事のように考えながら、
「適当にやっときゃ、いーだろ」
早くこの面倒くせー時間を終わらせたくて、そう言えばひまりは俺の耳を引っ張り……
「いってー!」
「中学最後の文化祭なんだよ!適当に出来るわけないでしょ!」
プンスカ怒り出す。
「推薦だからな、姫宮頼んだぞ」
結局、担任や周りに説得されひまりに決まり……
後は、ロミオ役。
真っ先に名前が上がったのは家康。見た目と、ジュリエット役がひまりなら流れ的にそうなるだろう。
幼馴染で仲良しこよし。
ひまりは気づいてないが、家康が好意をもってんのは、誰が見ても分かる。
恋愛沙汰に全く興味なしの俺でも……
つっても、気づいたのは最近。
けど、
「……無理。俺、文化祭の日いない」
家康はバッサリ空気を切る。
「そうだったな!徳川はその日、弓道の全国大会!我が校きっての初出場!」
予選敗退した俺とは違い、家康は手にしていた、中学全国大会の出場権を。あんだけ、力の差見せつけらたら仕方ねー。
最近、肩の加減も悪いしな。
で……そっから可笑しな流れになり。
「はぁ!何で俺なんだよ!」
「幸が適当とか言うからじゃない?ふーんだ!」
ひまりが当てつけみてーに、俺を推薦。