第182章 〜後日談〜lost property〜
昼間の賑やかさが
消えた薄暗いの公園。
土曜日の今日。
人影一つない静けさは、
男の俺でも気味が悪い。
水銀灯が青白く照らす中、ブランコがひとりでに揺れ、耳にまとわりつく金属のこすれ合う音。
キィーッ…キィ……キィー…ッ。
(日が暮れんの、早いな……)
時間はまだ、午後六時。
中学以来だな。ココに来んの?
相変わらず大した遊具はねーけどよ。
噴水もねーし。
あるのはベンチと柱時計。
赤い滑り台、ちょっとした砂場……
あと、ブランコが二台。
俺は、ブランコの鎖を掴み。
軽く揺らす。
ーーねぇ、幸!!どっちが空高く漕げるか競争しよ!……ね?
ーーったく。しょーがねえなぁ。付き合ってやるよ。……怪我すんのはやめろよ。後でアイツにお小言食らうの、俺だしな。
自分がスカート履いてんのも忘れ……バカみてーに、ムキになって漕いでいたひまりの姿を思い出す。
負けず嫌いなのはお互い様。
ましてや、中学の俺はほんとガキ。
(一度も、勝たせてやれなかった)
学校が早帰りの日。
ひまりによく付き合わされた。
家康が塾でいない帰りは、特にな。
小学は違う学区だったが、隣同士で中学は一緒。自転車通学だった俺。引っ越す前は、こっから十分ぐらい漕いだ距離に家があった。
ひまり家から近いこの公園。いつの間にか、寄り道のお決まり場所みてーに。
(三人でもたまに来たしな)
俺は二つあるうち一つに腰掛ける。片脚を曲げ、ブランコの上に乗せた。
鎖に頭をくっ付け、もう片方の脚でバランスを取り、携帯を取り出す。
『後、五分で着くからね!』
ひまりからのメール。
家康が漸く、
俺の連絡先を教えたらしい。
(今日は、流石に勝たせてやるか)
俺は地面に付いている足を動かし、
ブランコを横にゆっくり揺らした。