第35章 月見ず月(7)
五月には、中間テストがある。高校生の私にとって、避けたくても避けれない大きな壁。
赤点だけは絶対に避けないと!
頭に真っ先に浮かぶ織田先生の顔。
そして教壇に立って、口角を上げるリアルな織田先生。
(うぅ……何で、歴史の先生が織田先生なんだろう)
黒板の字を追いながら、ノートを取る。
少しでも頭に入れないと。
特に暗記が苦手なワケじゃないんだけど、歴史は本当に苦手。
だって、伝わり方次第では曖昧な部分があったり、新しく昔の資料が出てきたりすると、大きく歴史が変わったりする場合があって。
だからこそ、面白いのかもしれない。
読み解き方や、発見一つで言い伝えや物語が変わるから。でも私はつい、
もしかしたら……
本当は……
そんな想像ばっかりして、その時代の世界に入り込んでしまう。
テスト範囲無視して、違う事まで調べて……時間をかけちゃうのが私の赤点の理由にも繋がってる。
「平安時代の男は、好意を寄せた女に和歌を添え文を送るのが主流だ」
(今回の、平安時代なんかまさに物語の宝庫)
「女は、その和歌から内容を読み解き吟味した後、顔も知らぬ相手を選ぶ」
手紙を吟味し、相手を選ぶか……。
なんか、今の私の状況に似てる?
「そして女は選んだ相手に、文を送り返し……まぁ、今で言うデートのような約束を交わす」
織田先生はチョークを滑らせ黒板に、一つの和歌を書く。
「姫宮、コレを詠み解いてみろ」
「へ!?私ですか?」
「貴様と同じ名の者が、他におるか?」
「い、いません……」
私は苦笑いを見せながら、黒板に書かれた和歌を見る。