第180章 〜後日談〜家康様side〜
ワサビは元々、元気が良すぎる方。小型犬の割には、散歩はやたらと行きたがるし、躾けても興奮するとすぐに言う事を聞かなくなる。庭に放せば、花壇は荒らすし。
「ちょ!暴れ過ぎだって」
「ほらワサビ、おいで〜」
ひまりの甘やかすような声。両手を広げて、ワサビを抱っこしようとするのが、視界に入り…
「まだ、だめ。……俺が先」
ヒョイと腕を引き、
ワサビを一旦下ろすと……
ドンッ!
「…んんっ……」
ひまりの後頭部を掴み、
身体を壁に押し付け唇を奪う。
「……んっ…おば……っ…さ…んが…」
受け止めながら薄っすら目を開けて、ひまりは吐息に交えながら言葉をつなぐ。生憎、母さんは留守。父さんの病院の関係で夫婦揃っての接待があるらしく、両親共々、夜まで帰ってこない。
「……いないから」
俺がそれだけ言って、
再び塞ごうとした時……
「クゥーン…キャンキャン!!」
ガブッ。飼い犬にはじめて噛まれた。
まぁ…そのお陰で。
「もう!ワサビ怒らせてどうするの!?」
リビングまでは連れ込めたけど。
ひまりはプンプン怒り、消毒液で歯型がついた俺の脚を手当てすると、救急箱を棚に仕舞いに行く。
「キャン…クゥーン…」
「はいはい、お前は悪くない。……俺が悪かった」
ソファの下でおすわりしながら、反省してるのか……耳と尻尾を下げるワサビ。俺は前屈みになり、頭を撫でる。
するとすぐに耳を立て尻尾を振り、戻ってきたひまりの元に走り寄った。
「ちゃんと、注射してあるから一応大丈夫だとは思うけど……。ふふっ。それにしても、まさか家康が飼い犬に噛まれるなんて!ね〜〜?」
ひまりはワサビを膝の上に乗せ、話しかけながらクスクス笑う。
(情けなくて、文句言えないし)
飼い犬に嫉妬して、仕返しされるとか。