第180章 〜後日談〜家康様side〜
それから、暫くワサビにひまりを独占され……
俺は、携帯で明日から始まる朝練の連絡をメールで回した後。
渋々ソファから立ち上がる。
「あ!私で良ければ何か作るよ?」
「確か、今晩は作って置いておくって言ってた」
冷蔵庫を開ければ、夕飯とその上にメモ書き。
ラップされた料理。
その上に貼り付けられた、
『夜の九時にしか、帰らないからね〜』
メモを見て思わず苦笑い。
親なのに変な気使い過ぎだし。
パタンと冷蔵庫を閉めると、
「夕飯、いつでも…そ、の…///作りに来るから……留守の時は言ってね?」
すぐ後ろから聞こえたひまりの声。
「頑張って、練習いっぱいしておくから……」
声だけ聞いたら分かる。
何してんのかが。
髪をかき上げた後、俯いてスカート握りしめてる可愛い姿が、頭に一瞬で浮かぶ。
(ほんと、頭おかしくなりそう)
相変わらず、ひまりは気づいてない。
仕草一つ、言葉一つでどれだけ俺を狂わせてるか。
軽く息を吐き、振り返らずに。
期待してる。
「将来、俺。毎日ひまりの手料理食べるから」
絶対、前向いて言えないような台詞。いつか真っ直ぐ見てサラッと言える日が、来ればいいけど。
(当分無理かも……)
じわじわ後から恥ずかしさが追いかけてきて、後ろを向いてる癖に、かぁっと目元が熱くなる。
(っとに、部屋にも連れ込めず何言って……///)
大事にしたい気持ちと、
欲しい気持ちが揺れ動く中。
俺は、ついに……
トンッ……。
「……そんな事言われたら、進路希望に書いちゃうよ?」
家康のお嫁さんって。
背中に回ったぬくもりに……
一気に、欲しい気持ちが上回った。
「……帰したくなくなった」
最初からそんな気ない癖に。
「教えてあげる」
何でこんなに
ひまりが触りたくなるか。
口では素直になれない分……
どれだけ俺にとって、
ひまりがトクベツか……
「い、えやす……」
部屋でじっくり教えてあげるから。