第179章 〜後日談〜姫主様side〜
その日の放課後。
明日から朝練が始まる。家康は部室の鍵を取りに行ってくるから、先に昇降口で待っているように言われ……
廊下をゆっくり歩いていると、
「やぁ。激甘学園生活楽しんでるかい?」
「さ、佐助くん!!」
後ろから肩を叩かれて、振り返る。
普通に登場した佐助くんに逆に驚いてしまい、静かな廊下に私の声が反射した。
佐助くんは相変わらず冷静に眼鏡をクイッと押し上げ、「新鮮な反応ありがとう」と言う。私は変なお礼言われちゃったと思い、はにかんだ。
「私の方こそ、写真ありがとう!届けてくれたの佐助くんでしょ?」
「礼はいらない。俺も君の寝顔を拝見させて貰った」
へ!?///間抜けな声を上げれば、冗談だ。と、眉一つ動かずに返ってくる。
(冗談なのかな?真剣なのかな?)
まだ、掴めないけど。
でも、初めて会った時の親近感は更に深まっていて、気軽に話す。
「私こそ、文預かったままでごめんね?まだ…上手く言えないんだけど…書物を繰り返し読むたびに、あの文の伝えたいことが見えてくる気がして……」
だからもう少し待って欲しいとお願いをすれば、佐助くんは静かに頷いた。
「今日も石碑調べてたの?」
廊下の窓に視線を向けて、そう尋ねた。
そこから石碑は見えないけど、裏庭は少しだけ見える。
「いや。信長さんに会いに来たんだ」
「織田先生に?」
意外な返事に、聞き返せば……
「この前、君に石碑のレプリカを借りた時に、一つ気になったことがあったからね。今、聞いてきた」
あまりにも忠実に再現されていたからと、佐助くんは話す。私は首を傾げて、織田先生ほどのセレブなら凄い職人さんに頼んで作って貰えそうだけど?と思っていると……
コツンと今度は、頭を叩かれた。