第179章 〜後日談〜姫主様side〜
頭を片手で撫りながら振り返れば、不機嫌そうに顔を顰める家康が立っていた。
「昇降口に居ないと思ったら。……何、やってんの?」
「え?何って佐助くんと……あれ!いない!」
いつの間に……。
ついさっきまで話していたはずが、こつぜんと姿は消えていて……。
(登場が普通でも、去る時はいつも通りなんだ……)
あはは。もう、笑うしかない。
「それより、どうしたの?不機嫌な顔して??」
そう言えば、昼休みぐらいから機嫌がちょっと悪いような……。
「……教えない」
プイッと顔を横に向けて、ますます不機嫌になる家康。身に覚えがなさ過ぎて、私はキョトンとする。
行くよ。
そう言って、
スタスタと歩き出す背中。
「ま、待ってよ!」
慌ててシャツを掴んで、もう一度不機嫌な理由を尋ねた。
「ちゃんと言ってくれないと、わかんない……」
私、また知らない間に何かしたのかと思って不安になる。
折角、テスト終わって部活もなくて……
(予備校ないから、二人で帰るの楽しみにしてたのに。家康が不機嫌なのは、やだよ)
ぎゅっとシャツを握れば、
家康はゆっくり振り返って……
「………はぁ…そんな顔させるつもりじゃ……ごめん…。別にひまりに怒ってるわけじゃない」
「ほんと?」
頬に触れる手に甘えながら、見上げると家康は口元を緩めて「ほんと」と言って、私の鞄をヒョイと持つ。
「え!いいよ!自分で持つからっ」
「お詫び。それより、今日の歴史ちゃんと出来たわけ?」
「うっ……た、多分。あ!駅前で売ってた、あん饅食べたぁーい」
「……誤魔化してるし」
結局、家康の不機嫌だった?理由ははぐらかされたような……気もしなくないけど……進路希望のことも気付けば頭の片隅に消えて、すっかり私の頭の中はあん饅に占領されていた。