第179章 〜後日談〜姫主様side〜
(……やっぱり、そうなのかな?)
もう一度、窓辺に視線を移す。
そこには、とっくに進路希望用紙を提出して政宗と話す家康の姿。
風でヒラヒラ揺れる白いカーテンが、
何だか白衣のようにも見えた。
幼稚園から、高校までずっと一緒。
まだ、卒業まで一年半もあるのに……用紙を渡された瞬間。心の中に、何だかぽっかり小さな穴があいた気がして……
夢はあるけど、
(まだ、ぼんやりだしなぁ……)
あくまでも進路希望。
でも、早く決めなさい!って、急かされてるみたい。
ぼんやりな私とは違って、家康は夢を叶える為に、しっかり進路が決まってて、その為に予備校にも通って、成績は学年トップ。部活でも部長をつとめて……
(寂しいのもあるけど、う〜ん…ちょっと違うような)
書物を読んでから、
何かが少し変わり始めていた。
争いの絶えない戦国時代。
命の危険と常に隣り合わせの中、それでも深くお互いを信じ、愛し合った二人。
約五百年の時が過ぎても、言い伝えやジンクスにまで繋がった戦国武将と戦国姫の物語。
(そんな二人の存在に近づくのは、きっとほど遠い……)
家康と石碑の前で想いを通わせて、恋人同士になってからまだ日は浅いし、織田先生も二人で成長していけば良いって、それが大切なことだって教えてくれた。
でも……。
私の成長ペースと家康の成長ペースは、かけ離れている気がする。だからかな?ちょっと置いてけぼりになった気分。
ちょっとした不安と寂しさが入り混じる。でも、不満なんてこれっぽちもない。
「確か明後日、締め切りだよね?」
「もう、なんなら徳川のお嫁さんって書いて提出したら?」
「へ!///そんなの書いたら、織田先生にすぐに呼び出されちゃうよ〜っ」
真剣に悩んでるのにーっ!私は、ゆっちゃんの肩をガクガク揺らして、赤くなったり、涙ぐんだりして騒いでいると……
同じクラスの仲良い子達が、
「何、なに〜〜」
「ひまりの進路がお嫁さんだって?」
「違うよーっ!」
席の周りに集まってきた。