第177章 涙色の答案用紙〜あとがき〜
言い伝えを半分終えた今日の二人。
「……っと。何で、泣くわけ」
「な、んか心がジーンとし…て…」
ひまりは、書物を閉じて胸に寄せる。
でも、これは悲しい涙じゃなくて嬉しい涙だよ?と、相変わらず語尾にクエスチョンマークを付けて、涙を拭えばその指にキラリと光る三つ葉。
家康はそんなひまりを愛おしく思い、絹のようにサラリと伸びた長い髪に指を滑らせ、もう一つの三つ葉に唇を寄せると……
「ねぇ。この香り、何の花?」
今度は鼻を近づけ、尋ねた。
「えっと〜ピンク山茶花の香りって、書いてあったよ?」
人差し指を口元にあて、ニコリと笑う。泣いたカラスが笑うとはまさにこのことだろう。
家康はその言葉を聞き、頭の奥にある知識の引き出しを開く。
(確か…花言葉は……)
頭を巡らせている間に、今日付けているヘアオイルが、修学旅行中の宿泊ホテルで販売していたことをひまりは話し始め……嬉しそうに声を弾ませた。
「ピンクのボトルが凄い可愛くてね!」
「ゆっちゃんにも、好評で!」
「あと、お取り寄せも出来るんだって……って…どうしたの家康?」
そんな姿にうっかり魅入っていた家康。じっーと、不思議そうに大きな目で見つめられ余計に緩む口元。
(でた。ひまりの必殺技)
それを手で隠し、いつもなら「別に」と答える所だったが……
覆っていた手を外し、
グイッ。
「わぁっ!!……な、なに!?」
「もう、限界」
ひまりと一緒に芝生の上に転がった。
夕陽があと数分もすれば沈む……
転がった拍子に、家康の上に乗ってしまったひまり。
「い、えやす……」
たとたどしく、
自分の名前を呼ぶ声に……
「……ひまり」
家康は待ち切れなくなり、引き寄せ唇を重ねる。甘い香りを漂わせ、零すに甘い吐息に酔ったように、深まるキス。