第177章 涙色の答案用紙〜あとがき〜
紅葉の綺麗な季節がはじまる。
肌を掠める風は冷たさに、
深まる秋を感じながら……
皆んなの姿が裏庭から消えても。
「寒くない?」
「これだけ、くっ付いてたらあったかいよ?」
私達は、約束通りまだ石碑にいた。
「何か、今日はずっと石碑の近くにいる気がする」
「そう言えば、佐助が何でレプリカ持ってたわけ?」
「昼休みに探しに来た時にね?ちょっと預からせて欲しいって言われて……普通に返してくれたから、聞くの忘れてたけど……」
何か調べてたのかな?
私は石碑のレプリカを、クルクルまわす。特に変わった所が無いのを確認して、芝生の上にコトリと置くと書物に手を伸ばした。
柔らかい芝生の上に座り込み、剥き出しの脚に掛けられた紺色のブレザー。私の体は家康の少し開いた脚の間にスッポリ収まり、背中もあったかい。
(前も後ろも横も、全部、家康の香りがする)
ふふっ。と、笑みを零せば「何で、笑ってんの?」ってすかさず聞かれて、首を横に降る。
「何でもなぁーい!」
「ひまりの何でもないほど、あてになんない」
「そ、れ、よ、り!ちゃんと一緒に読もっ!」
肩に乗る家康の腕の重みさえ優しく感じて、私は膝を曲げて掛けて貰ったブレザーの上に書物を乗せた。
ハートの栞が
挟んであるページを開き。
「ってか、暗記するほど読んだし」
「一緒に読みたいの!……だめ?」
顔だけ後ろに向けて、眉を下げる。
(やっぱり、迷惑だったかな?)
どうしても、今じゃないと駄目なんて理由は全然ない。でも、明日からはテスト期間。
そうなると、必然と家康は予備校で忙しくなるし、私も期間中は図書館行ったり、家で机にしがみ付いて勉強の日々。だから、こんな風に一緒にいれる時間が少なくなってしまう。
家も近所で。
登下校も一緒。
その上、学校でも会える。
でも、もっと一緒にいたい。
この気持ちが……
「……だめ?」
伝わると良いな。