第33章 月見ず月(5)家康様side
ベッドに戻ろうとソファから足を下ろした瞬間、
「い…ちゃ……や、だ……」
「っ!!」
寝惚けているのかひまりは突然、裾を引っ張る。
反応に遅れ、フラついた足に力が入らず……
俺の身体がグラつく。
「ワ……サビ」
ぎゅっ!!
(なっ!!///)
慌てて受け身を取って、ひまりを潰さないように気をつけたのに、首に回された腕に引き寄せられ、かなりやばい体制が出来上がる。
顔に当たる柔らかい膨らみ。
甘い香りをした髪が、
鼻をくすぐりながら漂う。
「ん〜…か、わ……い」
完全に寝惚けてるひまりは、ワサビを抱くみたいにして、俺の髪を撫で胸に押し付けた。
(や、やばい!///)
(ってか柔らかい///)
(しかも、大っきいし///)
この展開はかなり、
年頃の俺にはおいし過ぎる。
「……い、い…こ」
今、ひまりが起きたらマズイ。
絶対に勘違いされて、
二度と口利いて貰えなくなる。
(また熱上がってきた)
「んん……あ、れ?ワサビ……大っきく……なった?」
しかも、起きたし。
目元を軽く擦るひまり。
「………ワン」
完全に動揺した俺は、
苦し紛れに、犬の鳴き声を出し
その場しのぎを試みる。
「な、んか……鳴き声、おかし…いよう…な?」
まだ暗闇に慣れていないのか、
うっすら開いた目は俺だと気づいていない。
「……キャン」
間違いなく、俺の中で
黒歴史が生まれた、瞬間。
「ん〜……もっと、いつ…もは…甘えたみたい…に」
「……くぅーん」
次、俺の部屋来たら覚悟しなよ。
甘い誘惑と甘い屈辱に苛まれ、
二つの熱に侵されながら、
___何とか、朝を迎えた。