第177章 涙色の答案用紙〜あとがき〜
私が今朝、下駄箱に入れた手紙。
そして色褪せた文。
「持ってきてんじゃねえか」
「一緒かどうかはわかんない。ひまりの方、滲んで読めない」
「あ!そっか!……新学期の日に渡すはずだった手紙だから……」
涙で滲んで……小さくそう呟いた後、私も石碑のレプリカの裏に挟んでいた手紙を取り出す。
「……三通目の手紙。家康が差出人なんだよね?これも滲んで読めなくて」
「涙色じゃなくて、俺のは雨色」
家康は顔近づけて、頬を寄せると……
「……俺のお姫様」
って、書いてあった事を教えてくれた。今朝、聞いた台詞と同じ。一瞬だけ沈みかけた心がすぐに、軽やかになって思わず頬が緩む。
私もまた、内緒話みたいに手を添えて……
「……貴方が好き」
って、書いた事を伝えた。
夕陽の所為に出来そうにないぐらい、顔に集まる熱。手紙でつい隠すと……家康は「答え合わせ全問正解?」って、滅多に見せない柔らかい笑顔を見せてくれて……
「俺のは、多分……。届けるの悩んだと思う。宛名が「徳川家康」じゃなかったからね」
「え??なら、佐助くんのお父さんはどこを見て家康のだって、わかったの?」
「多分、書物と中の文章見て判断したんじゃない?」
家康はまず、文を広げる。
そこには……
『……貴方が好き』
全く同じ文章に、思わずぽかーんと口を開ける私。
「これだけ。でも、全く同じ」
「再会を願う文ではなく、恋文ですね」
「クッ。で?宛名は何だったんだ?」
皆んながグイグイ家康に近づいてくる。
「勿体ぶらずに見せたらどうだ?」
「ちょ!秀吉先輩、持ってかないで下さい」
「秀吉、渡せ。……ほぉ、成る程。これが理由でやたらと運命には頼らないと、公言してたんだな」
???
織田先生は、自信がなかったんだろ?とか、ニヤリと笑って家康に文を返す。
「捻くれ者に成らざる終えなかった。と、いうわけか?」
「別にこれが、理由なわけじゃありませんから」
「え?何て書いてあるの?」
知りたい?と、聞かれコクリと頷く。