第177章 涙色の答案用紙〜あとがき〜
戦国姫が現代から時を越え、織田信長を本能寺の変から救い出し、そこから歴史変わり……。
そして織田家の姫となり、数々の試練を乗り越え戦国武将達と過ごした思い出が、まるで教科書みたいに記されたのがこの書物。
「って、ことだよね?」
私は、混乱しそうな頭を一つ一つ整理していく。
「まぁ……そんな感じ」
「そして戦国武将と同じ名前の皆んなの所に、戦国姫が再会を願った文が届けられて……?」
「戦国姫から……とは、言い切れない。手紙の差出人の名前はあくまでも、「ひまり」」
家康は意味深にそう呟き、私の方に顔を向ける。さっき暴れた時に乱れた髪。それを指先で直しながら、三つ葉のヘアピンに触れ……
優しい手つき。
なのに気のせいかな?
口調と表情が、ちょっと拗ねてる気がするのは?
「え???戦国姫の名前が「ひまり」だからじゃないの?」
そんな家康の様子が少し気になりつつ、疑問をぶつける。
「中を読めばわかるけど……」
「戦国姫がひまりとは、書かれていない」
家康の言葉を遮る、織田先生。
それを聞いて、整理するどころかまた一つ増える謎。私は再び混乱して、人差し指をおでこに押し付ける中、話は続く。
「書物によれば、確かに徳川家康が愛した女性の名は「ひまり」と伝えられてはいるが……」
そのページは見たのだろ?と、先生に聞かれ……さっき家康が見せてくれたページのことだと分かり、頷く。
「文の内容と書物の内容を見る限り、同一人物だとは思うが……何故かその辺りは曖昧に書かれている」
それは、作成した者に聞くしか真意はわからないと。意図的な理由があったのか、何もないのか。それはもう、想像の領域だと先生は言う。
「そして、その二人が学園の言い伝えである、戦国武将と戦国姫とも記載はされていない。だから、君が選ぶ必要があったんだ。戦国姫に選ばれた君がね」
一通目の手紙がまさにそれでは?と、佐助くんは眼鏡の奥でほんの少し笑みを浮かべた。