第177章 涙色の答案用紙〜あとがき〜
その日の晩。
その書物を読みふけり衝撃受ける。そこには、織田信長が本能寺を生き延びていたこと、戦国学園の創立者でもあると記されていた。
ハートの栞が挟まれたページ。
そこには、学園の言い伝え。
興味が一気に沸き立つ。
ページを捲れば捲るほど惹きこまれた。
そして最後に手にした文。
自分には見覚えのない感謝の言葉が綴られ……
『いつか巡り合う日まで、戦国学園で待っていて下さい』
それから数日後。
帰り道に通りかかった公園。
泣き声を聞き足を止めれば、
「いっちゃん、いたぁい…ひっく」
「傷を見るから痛いんだ……こうすれば…」
膝を擦りむき泣いている、一人の少女。栗色の髪で顔を半分隠し、座り込んでいた。その前で猫っ毛の髪を揺らす一人の小僧。腕を伸ばし地面に咲いていた花を一輪摘み……少女の膝を隠す。
大きな瞳から溢れていた粒が、
地面に全て吸い込まれ……
「ほんと!魔法みたい!」
泣き顔に花が咲き俺はその少女の笑顔に、胸を打たれた。
「家康〜!ひまりちゃ〜ん!帰るわよ〜」
「「はーい」」
手を繋ぎ俺の隣をすり抜けた二人。
少女の手には一輪の花。
『巡り合う運命』
俺の中の辞書にはない言葉が、脳裏に駆け巡り……
書物は恐らく、この少女の為に作成された物。そんな気がしてならなかった。
「姫宮ひまり!」
赤いハートの鞄を肩から下げ、ふわりとまたが花が咲く。
(待っていてやる)
書物さえ持っていれば、必ず学園に来ると踏んだ。
全て話し終わった後__
見上げていた空から、ひまりに視線を変える。何色にも染まらず、澄んだ瞳が俺を見ていた。
(俺が話せるのは、これぐらいだな)
戦国姫としてではなく、
気づけば、一人の女として惹かれていた。
家康と同じ想いを抱いていたこと。
二人の愛が永遠ならば、
告げる日は一生訪れないだろう、な。
口には出せぬ心の声に、俺は嘲笑った。