第177章 涙色の答案用紙〜あとがき〜
家康はコツンと
私の頭に自分の頭を乗せる。
「教科書と言うより……」
何かを考えるように、そう呟いた時。
「まるで、恋文だな」
突然、背後から聞こえた声。
「「……織田先生」」
私と家康は少し離れて、
声の主の方に身体を向ける。
すると後ろから……
「皆んな……」
明智先生、秀吉先輩、政宗、三成くんの四人もこっちに向かって、歩いて来て。
シュッ。
「俺も忘れないで欲しい」
いつも通りの登場の仕方で、佐助くんも姿を現した。
「どうして此処に…」
佐助くんはさっき昼休みに話したから此処に居るのはわかるけど、他の皆んなが来た理由がわからない。
そして、
皆んなが石碑の前に集合すると……
突然、ブワッと勢いに任せた追い風が一つ。秋の香りを運びながら背中に吹き付け、何事もなかったかのようにピタリと止む。
その時に、皆んなが手に持っていた何かが靡くのが見えて視線を向ければ……
(あれは……)
一つは……
三つ葉模様の私が書いた手紙。
もう一つは手紙じゃなくて、色褪せた紙。
佐助くんも石碑のレプリカと、皆んなと同じような紙を持っていて……
頭の中に???マークを浮かべると、織田先生がゆっくり私に近づいて……
「貴様が家康に想いを告げたら、教えてやると約束したからな」
ぽんっ。私の頭にそっと手を置く。
「……この書物を小さい頃に渡したのが、自分だって事をですか?」
「え?織田先生が??」
隣に立つ家康は、私の手を握ると織田先生に目を向ける。
そう言えば、さっき黒髪のお兄さんにこの書物を貰ったって、小さい頃の私が言ってた事を家康は教えてくれた。
失われた記憶。
でも……
「……覚えていないか?名を聞けば、花のようにふわりと笑い、答えたぞ」
頭の優しい重みと大きな掌。
穏やかな声。優しい独特の微笑。
赤いネクタイ……
記憶の断片が脳裏に、パズルのようにはまりだす。