第177章 涙色の答案用紙〜あとがき〜
約五百年前の戦国時代。
戦国武将と戦国姫がこの石碑の前で
「永遠の愛を誓った」
「小さい頃に読んだ物語。それが学園の言い伝え」
家康はあとで、そこは一緒に読もう。
そう言って、私を更に強い力で腕に抱く。
そして、戦国武将六人の歴史。
「歴史?これ教科書なの?」
「……ただ、俺たちが勉強した歴史とは少し違う。その書物には、織田信長は本能寺で亡くなっていない」
驚いて思わず振り返る。
「確かに色々な説があるって、テレビとかで聞いたことはあるけど……授業で習ったのは、本能寺で明智光秀の謀反によって襲撃されて……」
「だけど、その書物には織田信長は本能寺の変で、突如、舞い降りた天女に命を救われた。って書いてあるし、明智光秀とも信頼関係だったらしい」
家康が言うには、その天女が言い伝えの戦国姫で、織田信長がその戦国姫を織田家の姫にした所から歴史が変わったのではないかと、説明してくれた。
「約五百年の時を越えて……?もしかして前に、階段下で佐助くんや織田先生がワームホールとか、文とかの話しをしていたのって……この書物の話……?」
『時を越える力が現れても、決して愛する人を、自分を見失わないで』
一枚だけ風化した文には、そう書かれていたって。
あの時みたいに、頭がぐるぐる回る。
胸に抱く書物の重みが一気に増した気がして、落とさないようにぎゅっと握る。
「全部が違うわけじゃない。現に徳川家康は平和な江戸時代を築き上げた……そう記されている。ただ……」
ちょっと貸して。家康はそう言って、私から書物を受け取ると、パラパラと捲りあるページを広げる。
「徳川家康」
そのページを目で追い……
数秒後。
呼吸が一瞬止まりかけた。
ドクンッ。
そう胸が一つ響くように鐘を打つと、目を限界まで開く。
「う、そ……」
「戦国武将六人の歴史は、簡単にしか記されていない。違うのは一部だけ。後は有名な話ばかり。ただ……」
一人一人戦国武将が戦国姫と過ごした思い出。それが歴史として残されている。