第177章 涙色の答案用紙〜あとがき〜
放課後___
明日から一週間、テスト期間に入る。
本当は今日だけ三十分程度の部活があり、道場の清掃予定だったんだけど……
「え?一年生が昨日してくれたの?」
「織田先生が、修学旅行前に言ってあったらしい」
「先生が?何でだろう?」
「昼休み呼ばれたのは、その報告」
部活後の放課後に
行く予定だった、裏庭。
手を繋いで初めて一緒に訪れた。
(何だろう……。今朝、来た時と少し雰囲気が違う……)
思い出したからかな?
小さい頃の思い出を。
私は渡された本を胸に抱いて、石碑に触れる。すると、家康の手が後ろから伸びて来て……手と手が重なった。
「その本……ってか書物。元はひまりのなんだけど。覚えてる?」
密着する体。
耳元でそう聞かれ、
「え?私の?」
私はううん。と声で返事をする。思い出したのは、家康と小さい頃ここに忍び込んで、お花の指輪を貰って……ファーストキスして……
約束を交わしたこと。
「黒髪のお兄さんに貰った。だから、読んでって俺に渡して……」
「黒髪の……?ごめん、思い出せない。家康とここに来て約束をしたことは今朝、思い出したの。でも、読んで貰ったお話は覚えてなくて」
この書物に書いてあるんだよね?
顔を少しだけ後ろに向けて尋ねると、家康の顔がすぐ間近にあって……
ドキッとする。
慌てて顔を正面に戻すと、家康は無言のまま重ねていた手を握り、今度は指を絡ませ……私の人差し指を動かした。
石碑に書かれた文字。
「約束の地」目の前にある「約」だけをなぞり……
「そこには、この学園の言い伝え、戦国武将六人の……歴史が残されている」
真剣な声で話す。