第177章 涙色の答案用紙〜あとがき〜
昼休みの図書室__
二学期に入り本腰を入れて、就職活動を始めていた副部長。夏休み中に職場見学に足を運び、新学期になってからは毎日のように図書室に入り浸っていた。
静かな空間。
企業の応募書類を見て慎重に絞り込み、面接の大切な心得、就活の知識を詰め込む。
そして、今日が提出の期限日……
しかし……。
「……はぁ。やっぱり、大卒が必須よね」
「出版社ですか?」
そう尋ねたのは、前に座る三成。
入学してから昼休みは、ほぼ図書室に足を運ぶ毎日。そして副部長が通うようになってからは、一緒に昼食を取るのが自然と最近の日課に変わりつつあった。
「私の夢なのよ。ファッション雑誌の女性編集者になるのが」
出来るだけ家族に負担を掛けたくないと思い、進学から就職活動に切り替えていた副部長。
「お母さんはね。気にしなくて良いから、進学しなさい……って、言ってくれたんだけどね」
募集企業の中に、出版社は一社もなく悩みため息を吐く。
「夢を叶えるのも、大切な親孝行に繋がると。私は、思いますよ。アルバイトしながら大学に通われる方も……」
家族との時間が優先。それならば、卒業までに年数がかかるが、ゆっくり通うのも一つの手ではないかと、三成は親身に相談に乗る。
副部長は、自分のことのように熱心に考えてくれる三成に、次第に好意を寄せ始め……
「そうね。なら、進学に切り替えたら勉強、ここで見て貰える?」
視線を泳がせながら、尋ねた。
「はい。私で良ければいつでも」
天使のような微笑み。
その三成の笑顔にうっかり見惚れそうになり、慌てて机の上に広げた書類をかき集め、鞄の中に仕舞う。
副部長の鞄にぶら下がる……
藤色の『夢守り』
それは、三成が京都で買った唯一の土産。副部長への贈り物だった。
ブッブッ…ー…。
二人の元に同時に届いた、メール。