第33章 月見ず月(5)家康様side
「う……ん。ワ…サビ。くすぐっ……たいよ」
柔らかい感触が指先を掠めた。
「!!!!!」
俺は瞬時に反応して、目を開ける。
一気に覚めた頭。
若干フラつきながら、
身体を起こし……
衝撃な光景に、軽く意識が飛びそうになった。
「すぅ……」
暗闇に慣れた目。
やっと携帯を見つけ、時間を確認すると深夜を回ったぐらいで。
そのまま、液晶の光でベッドの端を照らす。
何で!
ここにひまりが!?
俺、まさか熱に侵されて
ひまりを犯したとか?
そこまで考えて……
(……それは、あり得ないか)
そんな記憶あったら、
死んでも忘れないし。
俺はそっと手を伸ばし、髪に触れる。
すると擽ったそうに、ピクンと反応するひまり。
(ばーか。襲うよ)
熱が下がった今なら、間違いなく。
まぁ。キスはしても流石に
それはしないけどね。
今度は、一生口聞いて
貰えなくなるし。
(けど、その態勢はマズイかも)
絶対、次の日肩凝るし。
それこそ風邪引く。
俺は、起こさないように布団を剥ぎベットから降りる。汗まみれのシーツの上に寝かせるのは、流石に躊躇う。
フラつきながら、ひまりを横抱きにしてソファまで運び、衝撃で起こさないように気をつけながら、そっと寝転ばせる。
「ん〜〜ワ、サビ。おい…で…」
完全に俺とワサビ間違えてるし。
今頃、南国で走り回ってるのも知らずに。
俺は平気で置いてく割に、
ちゃっかり犬は連れて行く両親。
「は、や……くぅ……」
(俺を虐めないでくれる?)
軽く両手を広げたひまり。
俺はふにふにと頬を軽く突く。
「……ワサビじゃないし」
すると、
「んっ……」
艶かしい声を上げ、
短いスカートから剥き出しになった足を擦り合わせながら、横向きに転がって……
「い、えや……す」
大分引いた筈の熱が、また違う意味で上がってくる。
(……知らないよ。もう)
どうなっても。
ギシッ……。