第176章 涙色の答案用紙〜最終章〜※後編
石碑の前__
繋がった手と手。
三つの答え合せが心と心を繋ぐ。
小学校の時。
北海道の旅行。
そして読めなくなった答案用紙。
(この「時」、私は家康が……)
さわさわ吹く風が髪の香りを運んで、二人の周りに漂う。
ぐるぐる目まぐるしく、頭の中で今までの出来事が回り始めて。
止まって。
『思い出』から突然、『今』に引き戻され……まだ、少し夢心地な気分。
それでも、
オルゴールに刻まれた文字を見て……
「ひまり」
低いのに甘い掠れた声で、
私を呼ぶ
何かをじっと堪えているような
真剣な、家康の顔を見て……
(吸い込まれそう……)
胸が壊れるぐらい。
大きく跳ねて、鼓動を刻んで、震える。
胸が息苦しいほど。
涙ぐむように愛おしさが迫って……
(ちゃんと伝えたい……)
キュッと唇を噛む。
手紙じゃなくて、私の声で届いて欲しい。
息を吸い込んで。
少しだけ間を開けて。
それでも、真っ直ぐに見る。
涙をふるって。
勇気を振り絞って。
「……貴方が好き」
静かにただそう一言、告白した。
でも口に出した途端……
「い、えやすが…っ」
好き……っ。
色んな感情で詰まっていた心が、急に溢れ出してホロリと涙が出る。
「………何…コレ」
(え……)
心臓が止まりかけた瞬間。
家康の顔がくしゃってなって。
一世一代の告白に。
思わずその返事?
って……。涙が引っ込みかけるのと同時に、グイッと手を引っ張られ、地面に向かう身体。
(え……!)
悲鳴も上げる暇もなく、
腰に回された腕が支えてくれて
ぽすっ。
「……本気でやばい」
家康の胸が私にくる衝撃を、全部吸収してくれた。