第176章 涙色の答案用紙〜最終章〜※後編
♫♩♩……♪………
オルゴールの音色が止まる。
(あの物語だけは、思い出せない)
でも、あの本。
きっと、家康が持っている。
(早く、来て……)
先に来たかった。
この場所に。
でも、やっぱり一人だと不安になる。
春の新学期も、秋の新学期も。
家康が先にいた。
(次からは、一緒がいいな)
そう思った時。
ジャリ……
私はそっと胸に抱いていた、
石碑のレプリカを足元に置いて。
目を閉じて、
口元に人差し指を立てる。
「オルゴール……?」
ジャリ……
私達の本当の答え合わせ。
足を動かすと、
スカートがひらひらと揺れる。
風が一瞬、追い風みたいに吹いて……
髪がふわりと靡いた。
腕を伸ばして。
爪先立ちして。
声には出せないから。
口だけ動かして…
(ーーーー?)
代わりに
オルゴールに届けて貰う。
そして
新しい私を……
秋風に運んで貰う。
「……ーーーー俺のお姫様」
手に広がるぬくもり。
その答えかたは、ちょっとずるい。
でも……
どっちも。
「……こっちもーー」
正解かな?
嬉しくてはにかむ。
ますます好きなって、
ちょっぴり、悔しいけど。
やっと、心の声を言葉で届けれるから……
胸に手をあてて、
下から真っ直ぐに見上げた。