第174章 涙色の答案用紙〜最終章〜※前編
駅に辿り着いて。
「秋のウェディングフェア」
ショーウィンドウに飾られたドレス。
思わず視線が向く。
(女心と秋の空。移り気な女性の心を、真っ直ぐな愛のプロポーズで射止めよう。……何これ。宣伝文句にしては変わってるし)
移り気な心。
確かに、一理ある。昨日のひまりは、不安定で喜怒哀楽が激しかった。けどそれは……
傷ついた心が、余計にそうさせたはず。
感情も表情もコロコロと変わる所。
俺はそんなひまりが好きなんだけど。本人からしたら、ただの我儘にしか思えないらしい。
プロポーズ……。
俺はズボンのポケットに手を入れ、ちゃんとあるか確認。
(プロポーズはまだ先だけど)
今日は。
言い伝えごっこを終わらせたい。
幼馴染を卒業することばっか考えてたけど、昨日の織田先生の言葉で気づいたことがあった。
幼馴染の前に、自分たちが一人の男と女だってこと。最初から。
いつか。
正式に迎えに行ける日まで。
男磨いて、ひまりが安心して側にいれるように大事にしたい。多分、喧嘩はこれからもするだろうけど。
(って……勝手に盛り上がって、これで振られたら……)
ふと、そんなこと考えた瞬間。
新学期の朝、ひまりも同じ気持ちで……一人で通学路を歩いていたはず。石碑で身を裂くような想いをしたはずだ。
真っ直ぐ前を向いて。
ショーウィンドウのガラスから離れる。今の俺は……
全部のひまりを見て、
想いだけを真っ直ぐ見る。
『戦国学園』そう書かれた
校門を潜り……
ジャリ……
ちらほら登校をはじめた生徒をすり抜け、昇降口に向かう。
開いた下駄箱に一通の手紙。
『貴方は、運命の相手に選ばれました』
俺は、軽く息を吐き。
お姫様のイタズラに
喜んで付き合うことにした。
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春に動き出した運命。
そしてこの手紙から……
俺たち二人の「愛」が始まる。
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