第174章 涙色の答案用紙〜最終章〜※前編
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真っ直ぐに視線を追い出した夏。
気づかない内に、追いかけて…
「ある戦国武将は、
貴方を求めて止まらない」
タイムカプセルを開いた。
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鏡に映る私。
笑ったり、泣いたり、
怒ったり、拗ねたり……
昨日とは違う。明日もきっと違う。
そこに映る姿は今日の私。
ぬるま湯で顔を洗って。
タオルでやんわり拭いて。
髪をクシで軽く整えて、ヘアアイロンで真っ直ぐ伸ばす。
一房掴んで……
(切る予定だったけど……)
数秒見つめた後、手を離す。
そして無意識に押さえる首筋。修学旅行三日目に姿を消した、赤いシルシ。でも、ヒントを貰った夏の思い出は何一つ消えなくて、私の中にあの熱はまだ、ずっと残っている。
少し目を閉じれば、頭の中に次々と浮かぶ夏休みの光景。鮮やかに残された記憶に、少しだけ感傷的に浸って……
頬を軽く叩いた。
三つ葉のヘアピン付けて。
お気に入りのリップを付けて。
今日、初めて付けるヘアオイル。
長い間、愛用してみたいに私の髪に違和感なく馴染んで甘い香りが広がる。
ピンク色のボトル。
ピンクの山茶花の香り。
やっぱり、ピンクが好き。
部屋に戻って、鞄を肩に下げて、くまたんの頭を撫でて、バタバタ階段を降りて、お弁当を二人分持って……
玄関で靴を履き、
コンコンとつま先を数回鳴らす。
鏡で最後に笑顔のチェック。
「お母さん!いってきまーす!」
秋空に向かって走り出した。