第173章 涙色の答案用紙(36)修学旅行編
青春の思い出のひとつ「修学旅行」
忘れられない「思い出」
枕投げ、恋バナ、ドキドキしたり、ハプニングがあったり。景色を眺め、その地の文化、歴史を学び、感動したり、泣いたり、笑ったり。
そんな体験をした、
制服に身を包んだ高校生の二人。
「着物の裏にねぇ。ひまりちゃんと同じ名前が刺繍されてたんだよ」
「お兄ちゃんの方には、徳川家康の三つ葉!」
「縁、三つ葉じゃなくて葵紋だと、昨夜教えただろう?」
小袖の裏側、その胸襟に「ひまり」という文字の刺繍。
辛子色の着物の表側、その胸襟に徳川家の葵紋。
「二人に貰って欲しくてねぇ」
「遠慮せずに、受け取ってくれ」
家康とひまりは、赤い橋の出来事を思い出して顔を見合わせたが、二人は何も言わず、着物を受け取り深々と頭を下げた。
「お姉ちゃん!お兄ちゃん!また、遊びに来てね!」
「多分、冬休みに来るから」
「え?冬に、京都に来る予定あった?」
家康はニヤリと口角を上げる。信長とソックリな笑みを浮かべ、内緒。と、耳元で囁いた。
ひまりは何かを企んでいるのを察知して、腕を引っ張り「教えてよ!」と、強請るが明日の楽しみに回され……
「ぜっーたい、何かあやしい!後、イベントの景品も教えてくれないしっ」
「……明日。教えてあげる」
すっかり、本調子に戻った二人。
ーーあと、昨日の自由行動も何してたか教えて欲しい……あと、あと……。
イベント終了後、呉服屋に向かう前、遅がけに昼食を済ました二人。政宗に貰ったメモの店に行くと、雰囲気の良い完全に個室の部屋に案内され……
二人っきりという空間の中。
ーー休み時間も寂しくて。それで……。
昼食後、ピトリと腕に絡まり可愛く甘えるひまり。「明日まで、だめ」キスもさせて貰えず、家康は必死に耐えた。