第173章 涙色の答案用紙(36)修学旅行編
一歩、一歩。
ひまりは、ゆっくり俺に近づき。
スカートの裾を押さえ、隣に座った。
そして……
「姫を救ってやれ」
そう言われて、
俺はハッとしてひまりを見る。
三つ目のミッションは鬼退治と……
「俺、また何か傷つけ……」
「そうだよ!すっごく痛い!!」
「へ!?」
突然そう言われ、俺の口から素っ頓狂な声が上がる。するとひまりは口元を両手で隠して、肩を震わせクスクスと笑い……
怒ってんのか、笑ってんのかよくわからず、ただ眼を剥くと……
ゆっくり顔を上げ……
「ふふっ。急にごめんね?やっぱり嘘は吐きたくないから。それに、想いは明日言いたいし。でも、その前に……わがままも言いたくて」
それだと、困らせちゃうかな?
可愛らしく小首を傾かせ、茶目っ気に笑うひまり。
俺は唖然としながら、そんな事ないと返事しようとした時。いつの間にか上座に戻っていた織田先生が横槍を入れ……
「ひまりの性格を忘れたのか?何でも受け止めると言われれば、逆に自分も必死に受け止めようとする」
それでは、ただ何も言えなくなり無理をさせるだけだと。
「家康、貴様はまず今の自分を受け止めろ。まだ、学生だと知れ。以前の威勢はどうした?傷ばかり気にして守りや優しさだけ与え、それで男になれるのか?」
今は、ただの腑抜けにしか見えないと言われ……
(確かに。言われて当然かも)
何かが一気に肩の荷から降り、ひまりに声を掛け、お互い正面を向き合うように座り直した。
そして、一呼吸置き。
三つ葉のモチーフに触れる。
「忘れてた。大事なこと」
心の傷は、擦り傷のように体の一部が擦り切れて、痛いわけじゃない。
でも、締め付けられ、ズキズキ痛む。
それを癒すには時間もかかるだろうし、消えるモノでもない。