第173章 涙色の答案用紙(36)修学旅行編
刀が目前にまで迫り……
腕の限界が近づく。
(く、っ…!)
圧倒的な力の差、
それを見せつけられ……
「太刀筋は悪くないが……行儀が良すぎる。それでは、全ては受け止めるのは無理だ、な」
「……っ!!」
素早い動きで鬼は一歩後ろに下がり、渾身の一撃を振り落としてきた……それを、咄嗟に受け止めようとした俺の刀は、簡単に弾き返され……
パァン!!
刀が宙を舞い……畳の上に転がった。
「くっそ……」
俺はその場で立膝をつくと、
「貴様がひまりを想う気持ちだけは、買ってやろう」
ただし、自分の今の力量を知れと言われ……
「何もかも受け止めようとするのは、愚かだ。何も受け入れないのと変わらん」
「……今の俺には無理だと、言いたいんですか?」
情けない自分に腹が立つ。
想いを伝えても、
まだひまりの笑顔は戻らない。
無理させたいわけじゃない。
無理に笑って欲しいわけじゃない。
(今はそれを、受け止めるしか……)
「今だろうが先だろうが同じだ。互いを成長させる為には、時には言い合い、指摘し、歩み寄る必要がある」
まるで、心の声を読まれたようにそう言われ……押し黙った時。
「ひまり、入れ」
「はい……」
襖越しに聞こえた声。
スッと襖が開いて。
「聞いていたか?」
そこには、
制服姿に着替え……
三つ葉のヘアピンを付けた
ひまりが立っていた。