第32章 月見ず月(4)
家康は一瞬目を見開いた後、眉をふにゃと下げて……
「……弱ってる時に、ソレ反則」
まるで私に甘えるように、肩に頭を乗せた。
「いつから?体調悪いの?」
「本格的にヤバくなったのは、夕方」
何でも朝から織田先生に頼まれて、政宗と道場の周り全体を草むしりしてたらしい。
その時に、水撒きついでに水を浴びしたみたいで、それが原因かもと家康は言う。
「……あと。二、三日前からあんま、寝てない」
家康は私の肩を引き寄せ、
「ひまりが、全然喋ってくれないから」
拗ねた声でそう言った。
(……もう。そっちこそ、反則だよ)
そんな理由、受け付けないからね。
でも、自然と口が緩んじゃうのはきっと滅多に見せない姿を見せてくれてる、からかな?
家康は昔から体調が悪い時とか風邪を引いてる時は、棘が取れたみたいに素直になる癖?があって……
母親のおばさんと私の、二人だけしか知らない姿。
甘える家康なんて、普段からは想像できないけどね。
(まずは熱計って、寝かさないと!)
ご飯食べたか聞くとあんまり食べたくないと言われ、一先ず持ってきた料理を冷蔵庫の中に入れて置き、家康をベットに寝かしつける。