第173章 涙色の答案用紙(36)修学旅行編
大広間__
未成年に酌をさせるわけにもいかず、信長は徳利を持ち、とぽとぽと自分で傾けながら、盃に注ぐ。
その横でちょこんと胸元を隠しながら、ひまりは座り……
「先生?以前に時が来れば教えてくれるって、言っていましたけど……」
何か話せと言われ、話題を探している間にふと思い出し尋ねる。
以前に補習を受けた時。
あるキッカケで、歴史に興味を持ち戦国学園の教員になったと……話していたこと。
それと……
ーー時が来れば話してやる。……今は、自分の心をしっかり見ろ。万が一……道に迷っても、必ず帰って来れるようにな。
時を越えるチカラ。
あの言葉が気になっていたのだ。
「俺は、戦国学園の卒業生だからな」
信長は盃を口元まで上げ、手を止めそれだけ答える。そして、一口で飲み干すとニヤリと笑った。
「え??それが先生になったキッカケですか?」
「今日はある事だけ、教えてやる。後は、貴様が家康に想いを告げてからだ」
「え!!///」
ひまりは頬に手を当て、何でわかったんだろうと思うが、口には出さずチラリと信長を見ると……
「何だ?誘っているのか?何なら、家康から乗り換えるか?」
片腕の中に引き寄せられた。
「もう!///揶揄うのは、やめて下さい!」
「……相変わらず、威勢は良いな。しかし、表情はまだ、浮かないぞ?」
「……そ、うですか?そんなこと、ないですよ?」
「誰も無理に笑えとは、言っていない」
その言葉に、笑顔を作りかけたひまりはゆっくり頭を下げ、俯く。
信長はそんな姿にやれやれと思いながら息を吐き、盃を盆の上に戻す。そして、目の前にある頭にポンと手を置いた。