第172章 涙色の答案用紙(35)修学旅行編
そして、私達は先へどんどん進んで行き……。時々、からくりみたいな仕掛けが現れ、
「きゃっ!!」
「ほら、しっかり掴まって」
床が斜めに傾いていたり。
「わっ!!」
「足元、ちゃんと見なよ」
急に道が狭くなったり。
薄暗い中で、少し苦戦しながらも……もっとお化け屋敷みたいに、誰かが脅かしにくると思っていた私は……逆に拍子抜け。
少し手が汗ばみ、すっかり緊張感が解けた頃。
道を塞ぐように、小さな赤い祠がド真ん中にポツンと立っていた。
その後ろに、
扉があって先に進めなくなる。
「あ……」
「え!!な、何!」
「大丈夫。ただの紙切れ」
怖くてサッと背後に隠れると、家康は狐の面がかかっている祠の前に、手を伸ばす。顔にそれを近づけ、声に出して読み始め……
「二人で脱出したければ、恐怖を消し去り、狐の面に触れ……すぐに一番欲しいモノに触れろ……」
「え?一番、欲しいモノ?」
紙を覗き込みながら、首を傾げる。
「……意味不明」
私達は、祠の先の扉にいき様子を見る。一応試しに丸い取ってを掴み引いてみたけど、ガチャガチャと南京錠が揺れ、鍵がないと開かないのは一目瞭然だった。
「クックッ。ここが本番だ」
「あ、明智先生!!」
突然、明智先生が背後から現れ……
ガッーッ……。
鍵のかかった扉の真ん中の下。
そこに小さな抜け穴が、現れた。
「ひまり、お前なら通れる。手を離して、扉の向こうにある赤いボタンが押せば止まる」
それだけ言い残し……
ガチャン!?
明智先生が姿を消す。
すると来た道にも扉が上から現れて、
四方を壁と扉に囲まれた。
もう完全にパニックに陥って。
私は扉の向こうにむけて叫ぶ。
「え!?ま、待って下さい!全然、説明に……って!え!?」
「壁が!?……くっ…」
ガガッ……鈍い音が響き、
両側の壁が急に動き出す。
家康は咄嗟に繋いだ方の手を顔の横まで持ち上げて、繋いでいない方の手を、私の後頭部に回して、必死に押し返してくれる。
けど、
どんどん壁は真ん中に迫って来て……
向かい合わせの体勢で挟まれる。
家康が何とか手足で空間を作ってくれて、祠と抜け穴だけは塞がっていなかった。