第172章 涙色の答案用紙(35)修学旅行編
ひまりと手を繋ぎ、
扮装部屋から外へ。
昨夜……車のミラー越しに見たニヤリ笑み。根掘り葉掘り聞かれると思った呼び出しが、大した事なく……ただ、赤い橋でどんな現象があったか聞かれただけ。拍子抜けして……
(嫌な予感は薄々してたけど)
ひまりと過ごしている内に、そんなのどうでも良くなって、気を緩めていた矢先だった。
「……やらないって言ったら?」
案内をすると言って、一緒に外に出てきた男に尋ねる。
忍者の扮装なのか頭と口元を黒い頭巾で多い、目元しか見えず顔はわからない。けど、声は聞き覚えがある……
ーー時間がないので、用件だけ言わせて下さい。
(確か、佐助……)
「あの鬼に振り回されるのは、こりごりなんだけど」
俺の口から出る、不機嫌極まりない声。そもそも、こんな利点もないようなイベントに参加する時間があるなら……
「その声……もしかして、佐助くん?」
(このお姫様を、このまま連れ去る)
ひまりも気づいたのか……俺の背後から、ひょっこり顔を出す。
言いつけを守っているのか、ただ単に恥ずかしいのか……とりあえず、片手で羽織をかき合せながら、隣に移動。
「ひまりさん、元気そうで何よりだ。後、辞退の件ですが……」
佐助は眼鏡をキラッと光らせ、目に見えぬ速さで、俺の隣まで来ると……
宜しいのですか?
あることを耳打ちした。
「では、一つ目のミッションは鬼ごっこです。チェックポイントで、三つの的がありますので、見事に射抜いて下さい。途中で、鬼兵士に捕まれば終了になります」
ミッションをクリアすると、石が貰えるらしい。最終的にその石を三つ集め、鬼ヶ城にある石碑に嵌め込めば、イベントがクリアになると説明を受けた。