第172章 涙色の答案用紙(35)修学旅行編
「扮装部屋」
そう書かれた敷地内にある一室。
いきなり入り口で、イベントに強制参加させられ……ウンもスンもなく。選択の余地がないまま、数人のスタッフに部屋の中に押し込まれた。
そして、襖一枚越しの向こうで……
「え!?えーっ!?」
ひまりの混乱する声。
「ちょ!何なの!?」
俺も男性スタッフに囲まれ……
数分後。
(何、この格好……)
鏡の前に立たされ、盛大に溜息を吐く。
えんじ色の首巻きに、葵紋が付いた陣羽織。茶色の忍者みたいな穿き物……何かよくわかんないけど。そこに鞘、手には短刀を渡され……
二度目の溜息吐いた瞬間。
隣の襖がゆっくり開き、
……俺は息を飲んだ。
ひらりと、華やかな衣装を身に纏ったひまり。耳の横に、大きな花飾りが一つ。その本物のお姫様のような姿に、思わず見惚れ……絶句する。
「な、何かよくわかんないんだけど……///」
紅葉のような真っ赤な裾の長い羽織。
それを胸の前で搔き合せ……
何故か顔も真っ赤に染めていて……
その理由が……
「ど、どう見ても普通のお姫様じゃないよね///この格好///」
手を離した瞬間にわかった。
今度は目を疑い……
(……なっ!!///)
ゴクリと喉がなる。
羽織の下は丈の短いピンク色の打掛。
太腿ぎりぎりの長さ。そこからスラリと綺麗な足が剥き出し。下手したら制服のスカートより短い。
後……
「ど、どうしよう///」
手を前に交差して、必死に隠そうとするひまり。
胸元開きすぎだし。
(はぁ……もう、誰にも見せたくない)
俺はなるべく羽織を搔き合せて、いるように告げ。
こんな衣装を用意するのは……
忍者みたいに天井から、
覆面頭巾を被った男が現れ……
「お二人には、戦国の世界観で、鬼ごっこ…鬼ミッション…鬼退治に向かって頂きます」
(……あの、鬼)
俺の予想が、確信に変わった。