第171章 涙色の答案用紙(34)修学旅行編
「どんなイベントやってるのかな?人、多いかな?少ないかな?」
「……紅葉シーズンは外れてるけど、修学旅行生は多いかも」
チラッと私に向いた視線。
『迷子にならないでよ』そう、言われている気がして、苦笑いを返すと……
フッと急に家康の表情が柔らかくなって、それっきり。
「もう一日あったらなぁ〜。花魁扮装出来たのに」
いつか絶対したい!
そう言うと。
「……絶対、禁止」
即、却下された。
「え?どうして?すっごい綺麗に撮ってくれるってゆっちゃんが……。写真なら記念になるし……後でバスの中で見せて貰う約束したから楽しみ!!」
今頃、政宗とカップル撮影予約してることを話すと……
「そう言えば……」
の、前置きから始まって……後から物凄い後悔をするはめに。
「で?この前の休日、政宗と何してた?」
ニッコリ笑う家康。
つい油断して……
「え?何って……バイク取りに行って、お店手伝って……あとは〜えっと……」
記憶を辿りながら、順番に話をしていく。……家康の相槌を打つ声と、表情の雲行きがあやしくなり始め……
「雨が止むまで、部屋で待機。で?雷が苦手なひまりは、政宗と何してたわけ?」
「何してって……べ、別に何もないよ///」
あの時、自分の言った台詞をつい思い出してしまったのが間違いだった。
「……へぇ」
家康の眉上がヒクつく。
「……何で赤くなってんのか」
ちゃんと、説明しなよ?
そして、
私の頬がヒクついた。
電車の中。
折角、座ってたのに……
「はい。扉が開くまで残り五分。このまま睨めっこする気?」
背中には扉。
顔の横には両腕。
目の前には、怖いぐらい笑顔の家康。
(早くーっ!駅に着いてーっ!)
泣きそうになりながら……
ーーごめ…ん…ね。ダメなの。閉じ込めても、忘れようとしても……っ。どうしても、家康が離れてくれない…っ。目が合うだけで、私の全部すぐに持っていくの。
(言えない!)
告白とほぼ変わらない台詞。
明日言うからと、必死に睨めっこを続けた。