第171章 涙色の答案用紙(34)修学旅行編
改札口近くの壁に凭れ、行き交う人を何気なく見ながら……家康を待つ。
着物姿の若い女の子グループ。
寺院のパンフレットを見ながら、
歩く海外の観光客。制服姿の集団。
(つい、観光っぽい人に目がいっちゃうなぁ)
そんな中で、
目がすぐに見つけるのは一人。
家康は鞄を肩に背負い、暑いのか赤いネクタイを少し緩めながら、こっち向かって戻ってくる。
切符をスッと差し出され、受け取ると……
「ありがとう!でも、いいの?自分の分は……」
「いいから。それより……」
ぎゅっ。
また、手が繋がる。
切符を買う時に、離れた手。
さっきまで淋しかったのに……
繋がると、今度は落ち着かなくなる。
何でかな?
嬉しくて、幸せなのに。
まだ、想いをちゃんと……
伝えていないからかな?
それとも……
まだ、私の心の中に残る想い。
(明日……)
上手く伝えれるかな……。
あの場所で。石碑の前で。
俯きかけた時、家康は右手にはめた腕時計をスッと持ち上げると……「もう、電車来る」と独り言みたいに言って、私の手と繋がる利き手を……クッと引っ張った。
「転ける前に転けるっていいなよ」
「ふふっ。何それ?」
やっぱり、繋いでいたくて。
笑って、握り返す。
でも、笑う度に家康は少しだけ眉を寄せて、私をじっと見てて……。
「???どうかした?」
「……別に。まだ……。はぁ……何でもない」
歯切れ悪そうにそう言うと、ホームに向かって歩き出す。
電車は思ったより空いていて、座席に座り、今のうちに歩き疲れた足を休ませる。
ガタゴト揺られながら……
「ノリで手裏剣でも買うかーっ!」
「買って、何に使うんだよ?」
「何か、イベントやってるらしいよ〜」
修学旅行生っぽい数人のグループ。
聞こえてくる会話からして、行き先が同じ気がする。