第171章 涙色の答案用紙(34)修学旅行編
秋に少しずつ変わる空。
それを見上げたり、京都の町並み、雰囲気を楽しみながら……今までの時間を埋めるように、沢山話をした。
歩調を合わせ、
辿り着いた駅のホーム。
時刻表を確認する家康の隣で、私はふと、今朝聞いた天音ちゃんの話を思い出す。
今日は家族三人で大事な話をするから、修学旅行の最終日は不参加になったことを明智先生から聞いた。
(大事な話。やっぱり、海外赴任の話かな……)
正直、まだ天音ちゃんの事を考えるのは、辛い。
家康もそれを理解してくれているのか、天音ちゃんの話題は、さっきから一度も話さなかった。
一応、昨日お家の事情と、ヘアピンの話は聞いたけど。
(色々と聞きたいような、聞きたくないような)
まだ、少しだけモヤモヤしながらぼんやりしていると……
「三時に呉服屋。ってことは、滞在時間は三、四時間。……ひまり、聞いてる?」
突然耳元で聞かれて、
ドキリと胸が跳ねる。
「う、うん!聞いてるよ!」
慌てて返事をする。
ぼっーとしてると転ける。と、注意され、大丈夫だよ!と、言うのと同時に見事に階段で私は躓いて……
「……ドジ」
ふわりと支えられた身体。
人が周りにいっぱい居るのに、ぎゅって抱き締められて……
ーー……好きだ。
昨夜のこと。一気に思い出してしまい、今度は胸が熱くなる。私は、支えられた腕に手を添えて……お礼を言うと、そっと身体を離した。