第171章 涙色の答案用紙(34)修学旅行編
大きな瞳までふるふる揺れ……
プッ。家康はその反応に耐えきれず、吹き出す。
「もーっ!ばかーっ!」
「ぷっ…くっ、怒んないって言ったの誰だっけ?」
そうだけど!
まさか半分以上食べられるとは、思っていなかったひまり。家康は剥れる頬をふにふに突きながら、してやったり顔を浮かべる。
「ひまりが、さっきお預けするから悪い」
「だって!!……そ、のまだ///」
ひまりは顔を赤く染め、視線を横に逸らして……やっぱりもういい!スプーンの存在をすっかり忘れ、コーンに直接かぶり付いた。
まだ、何?
理由がわかった上で聞く家康。
ひまりはぷんっ!と、顔をそっぽに向け、食べ物の恨みは怖いんだからね!と、言い返す。
こんなやり取りも幼馴染ならでは。
しかし……
「ほら、返してあげるから。こっち向いて」
「え?どうやって?」
全く疑うことなく、顔を横に向け……
サァーッ……秋風が吹く。
竹林の歩道で……
重なった影がそっと離れた。
「………甘っ」
「〜〜〜〜〜〜っ///」
唇を押さえ、一歩下がるひまり。
カランッ。
持っていたスプーンが落ち……
家康はそれを拾って、素早く手を繋ぎ……
「消毒完了」
傷口をスッと指でなぞった。
キッと涙目で睨むひまり。
それを見て、満足げに笑う家康。
「ばーか。
(っとに、逆効果。可愛いだけだし)」
「ばかじゃないもん!
(心臓いくつあっても足りないよ!)」
「ひまりの食いしん坊」
「家康の意地悪!」
言い合いながらも、手は繋いだまま。
二人の一日は、まだ始まったばかり。
幼馴染ごっこ、最終日。
溶けかけたソフトクリーム。
二人の関係も甘く溶け出す。
真っ直ぐな一本道を歩き……
目的地に向かった。