第171章 涙色の答案用紙(34)修学旅行編
神秘的で美しい竹林。
歩道の両側に真っ直ぐ伸びた、
何千本の竹。
まるで、別世界に踏み込むような……
心地よい涼しさと、
視界全部が緑に包まれ……
隙間から溢れる光の中。
「美味しい〜〜っ」
頬っぺたを押さえる姫の隣で「花より団子」ボソッと季節外れなことわざを呟く、武将が一人。
家康の視線の先は……
湯葉のソフトクリーム。
それをスプーンでちまちま、ご機嫌で食べながら、歩くひまり。
(っとに。わざわざ遠回りしてんのに、結局、景色見てないし……)
ある観光地に向かう途中。
絶対に行きたい!と、騒いだ本人は今、白い渦巻きに夢中。
時間が勿体無い為、
お行儀悪いかな?
と、悩みつつ歩きながら食べやすいように、スプーンを貰っていた。
そのお陰で……
ずっと繋いでいた手が離れ、少々すね気味の家康。しかし、ちゃっかり片腕はくびれた腰元に。
「家康も食べる?」
「……いらない」
「美味しいよ?」
スプーンじゃなく、ひまりはソフトクリームを、至近距離で家康に近づけた。
白い渦と、それ以上に美味しそうな…
「あーん」の、ひまりドアップ。
もはや、食べたくなくても食べたい。
(何で、スプーンじゃないわけ)
そこ。
家康はそこにこだわる。
「食べてから怒んないでよ」
「え?怒らないよ?」
白い渦はそのまま、ひまりの顔だけが傾いた次の瞬間……
家康はニヤリと笑い、
口を大きく開ける。
天邪鬼、降臨。
バクッ!!
そして、白い渦が一口でなくなった。
「……意外に甘っ。…っ!」
口をぱっくり開けた所為か、家康はクリームを親指で拭き取るついでに、傷口にも触れる。
ひまりは、ポカーンと口を開けたまま……渦のなくなったソフトクリームを凝視。
数秒後。
「あーーーっ!!」
大絶叫。
ここに来る前、
「どうしたの?痛くない?」
心配そうな表情で、
家康の怪我を心配していたが……
それどころじゃなくなり。
ふるふると、コーンを持つ手が震え出す。