第170章 涙色の答案用紙(33)修学旅行編
そして、冷んやりとしたドアノブに手を伸ばそうとした時に……
「ったく。面倒くせえ、女だな」
「え……!ちょっ……!」
政宗は私の手首を掴むと、扉を開け中にいるスタッフの人に声を掛ける。
そして、私の衣装とヘアメイクをやり直しを頼み……了承を得ると、そのまま廊下をズンズン歩き出した。
「な、何よ……何なのよ!」
すっかり涙が引っ込んだ私。
今の状況に頭が付いていかない。
政宗に引っ張られて、頭が混乱する中、口と足は動く。
「無理して、着たくねえような衣装着るな。打掛、ピンクに変えてこい。後、カツラもやめとけ」
「ピンクって……私をひまりの代わりにさせるつもりっ!?そんなのお断りだからねっ!」
私は私を見て欲しい。
そう思ったから、だから……
ピタリと止まる足。
政宗の顔がゆっくり
私の方に振り返るのが、見えて……
「お前もピンク好きなんだろ?変な勘違いするな」
その言葉を聞いて、ハッと息を呑む。
(何で。何でひまりしか知らないこと……知ってんの?)
心で問いかけた。
そしたら、伝わったみたいに……政宗は話す。私達がお揃いで持っているものが、色も同じことを。
「いくら揃いでも間違えねえように、色ぐらい変えるだろ?昨日、土産屋で買ってた和柄のポーチ?か、何か知らねえが……あんだけ他に柄も色あんのによ……」
全く、一緒の買ってたじゃねえか。
嘘みたいに、不安がどっかに消えた。
部屋の中に入って、スタッフさんにお願いをする。
好きなピンク色の打掛。華やかで可愛い柄に変えて貰い、ヘアスタイルも地毛でアレンジ。最後に花じゃなくて、金色のシャラシャラしたお姫様のような簪を付けて貰った。
「……どうよ?」
「……似合うじゃねえか」
差し出された手。
「行くぞ。じゃじゃ馬姫」
仕方ないから、満面の笑顔を見せてあげて?素直にその手の上に私は自分の手を乗せた。